金沢ヒューマン文庫を愛し守る会「ひとなる通信」第110号
発行日:令和4年7月15日
発行:金沢ヒューマン文庫を愛し守る会
蒲郡市宮成町(蒲郡市立図書館内)
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―追悼― 毎日たき木をくべつづけた作家早乙女勝元さん90才で死去
作家で東京大空襲・戦災資料センター名誉館長の早乙女勝元さんが去る5月10日にお亡くなりになりました。90才でした。
早乙女さんといえば、今から40年も前の昭和57年(1982)の話で恐縮ですが、10月に、蒲郡市立図書館が主催館となり、蒲郡市民会館を会場にして開かれた「本に親しむみんなの集い―三河地区大会」の講師として来ていただき、『子どもに生きぬく力を』をテーマに、集まった皆さんを前に熱く語っていただきました。
思い出すのは、早乙女さんに直接電話で講師の依頼をしたときのこと、予算も制約のある中、無理を承知でお願いしたところ、即ご快諾いただけたこと。しかも当日は、蒲郡駅まで来ていただき、お迎えにあがったところ、お似合いのベレー帽姿でニコニコと笑顔で手を振ってくれて、何と庶民的な方だったな〜と・・・感慨深く、そのお姿が今も心に残っています。
それもそのはず、早乙女さんは、生粋の東京「下町っ子」。18歳のときに書いた自分史的な『下町の故郷』が直木賞候補になったほど。映画監督の山田洋次氏が映画「下町の太陽」の制作の際には、協力を依頼されています。以降、二人は親交を深め、葬儀の際には山田氏が弔辞を述べられたほどの仲でした。
戦争体験者の早乙女さんは、東京大空襲の記憶を”未来につなげていこう”と、平和の尊さを伝え続けてきた人で、その時にいただいた早乙女さんの色紙に込められた、「言葉の重さ」を今、重く受け止めています。
『その火を 消すな 毎日毎日 たき木を くべろ』
舩坂清伸